令和5年から扶養控除の対象となる扶養親族の範囲の見直しなどにより、「扶養控除等申告書」の様式が改正されました

 

 扶養親族の範囲見直しなどの法令改正により、令和5年分「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(以下、扶養控除等申告書)」の様式が改正されました。なお、令和4年分年末調整では「扶養控除等申告書」「保険料控除申告書」及び「基礎控除・配偶者控除等・所得金額調整控除申告書」の様式改正はありません。

1.法令改正の内容

(1) 国外居住親族に係る扶養控除の見直し
 ①国外居住親族に係る扶養控除の対象となる親族から、年齢30歳以上70歳未満の者であって次のいずれにも該当しない者が除外されました。
 a.留学により非居住者となった者
 b.障害者
 c.その居住者からその年における生活費又は教育費に充てるための支払を38万円以上受けている者
 ②年齢30歳以上70歳未満の非居住者であって上記①a.又はc.に該当する者に係る扶養控除の適用を受けようとする居住者は、給与等若しくは公的年金等の源泉徴収、給与等の年末調整又は確定申告の際に、上記①a.又はc.に該当する者であることを明らかにする書類を提出又は提示しなければならないこととされました。

(2) 個人住民税における合計所得金額に係る規定の整備
退職手当等(源泉徴収されるものに限ります。)の支払を受ける配偶者(※1)又は扶養親族(※2)について、氏名等を「扶養控除等申告書」(扶養親族等申告書)に記載することとされました。

(※1)
生計を一にする配偶者で、令和5年中の退職所得を除いた合計所得金額の見積額が133万円以下であるものに限ります。
(※2)令和5年中の退職所得を除いた合計所得金額の見積額が48万円以下であるものに限ります。

2.上記1に基づく令和5年分「扶養控除等申告書」の改正

(1) 非居住者である扶養親族に係る扶養控除の適用要件の改正に伴い、控除対象扶養親族の「非居住者である親族」欄に次のチェック欄が追加されました。
 ①16歳以上30歳未満又は70歳以上
 ②留学
 ③障害者
 ④38万円以上の支払

(2) 住民税に関する事項として「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」欄及び「寡婦又はひとり親」欄が追加されました。また、当欄の追加に伴い、「16歳未満の扶養親族」欄について1枚に記載できる欄が3人分から2人分とされました。

(3)「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」欄等の追加の背景
 扶養親族等の要件とされる合計所得金額には、所得税では退職所得を含めますが、住民税では含めないこととされています。このため、所得税では退職所得を含めて合計所得金額が48万円超となるため扶養親族に該当せず扶養控除を適用できない場合であっても、住民税では退職所得を含めずに計算すると合計所得金額が48万円以下となるため扶養親族に該当し扶養控除を適用できるということが生じえます。
 この場合に、住民税での扶養控除等の適用漏れを防止する観点から、令和5年分以後の「扶養控除等申告書」で従業員は給与支払者に申告し、給与支払者は給与支払報告書で市区町村に報告することとされました。
これに伴い、令和5年分「扶養控除等申告書」で「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」欄及び「寡婦又はひとり親」欄が追加されました。なお、これに伴い令和6年度(令和5年分)の給与支払報告書の記載要領が改正されました。

3.実務上の注意点

(1) 控除対象扶養親族の「非居住者である親族」欄の記載要領
 ①年齢が16歳以上30歳未満又は70歳以上の非居住者である扶養親族は、留学生、障害者、38万円以上の送金を受けているといった要件を満たす場合であっても、「16歳以上30歳未満又は70歳以上」にチェックをつけます。
 ②年齢が30歳以上70歳未満の非居住者で、留学生、障害者、38万円以上の送金を受けているといった要件を満たす場合のみ、「非居住者である扶養親族」欄の「留学」「障害者」「38万円以上の支払」にチェックをつけます。
また、上記1(1)②のとおり、該当する要件に応じた確認書類の提出が必要です。特に留学生については、令和5年分「扶養控除等申告書」の提出にあわせて、親族関係書類に加え、留学ビザ等の書類が令和5年の年初に必要ですのでご注意が必要です。
 ③この改正は、扶養親族等の数(源泉控除対象配偶者及び控除対象扶養親族の数)に関わるため、令和5年以降の給与(賞与)から源泉徴収する所得税に影響します。
源泉税の計算の際は、注意が必要です。

(2) 「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」欄等の記載要領
 ①「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」欄
「令和5年中の所得の見積額」欄には、令和5年中の退職所得を除いた合計所得金額の見積額を記載します。
 ②「寡婦又はひとり親」の記載要領
退職所得を除くと令和5年中の合計所得金額の見積額が48万円以下となる扶養親族を有することにより、従業員本人が寡婦又はひとり親に該当する場合にチェックを付けます。

(3) 「16歳未満の扶養親族」欄の記載欄減少の影響
 例えば、16歳未満の扶養親族(令和5年12月31日時点の年齢で判定)を3人有する従業員の場合、「扶養控除等申告書」は従前の1枚から2枚に増えます。