民法(相続法)の改正について(その11)

 民法(相続法)は、日本の高齢化の進展や社会経済活動の変化に対応して、残された配偶者の生活に配慮するなどの観点から、昭和55年以来、約40年ぶりの相続に関する大改正・見直しが行われ、平成30年7月6日、可決・成立し、平成30年7月13日に公布されています。

 今回はそのうちの、「法務局での自筆証書遺言の補完制度」の創設についてです(法務局における遺言書の保管等に関する法律)。

1.概要

 自筆証書遺言を作成した者が、法務大臣が指定する法務局(遺言書保管所)に、遺言書の保管を申請できる制度が創設されました。
 遺言書保管の申請は、遺言者の「住所地」若しくは「本籍地」または遺言者が所有する「不動産の所在地を管轄する法務大臣の指定する法務局(遺言書保管所)」の遺言書保管官(法務局の事務官)に対して行うこととなります。

(1) 遺言書保管所に保管されている遺言書については、家庭裁判所の「検認」が不要です。
(2) 遺言書の保管申請時には,民法の定める自筆証書遺言の形式に適合するかについて,遺言書保管官の外形的なチェックが受けられます。
(3)遺言書は,法律上の要件を満たしていれば、原本は遺言者死亡後50年間,画像データは同150年間、保管管理されます。
遺言書の紛失・亡失のおそれがなく、相続人等の利害関係者による遺言書の破棄,隠匿,改ざん等を防ぐことができます。
また、訂正や撤回も可能です。
(4) 相続開始があった場合,相続人等は,法務局において遺言書を閲覧したり,遺言書情報証明書の交付が受けられます。
遺言書情報証明書とは、遺言者の氏名,出生の年月日,住所及び本籍(又は国籍等)に加え,目録を含む遺言書の画像情報が表示されるものであり,遺言書の内容の証明書となるものです。
この証明書を取得することにより,遺言書の閲覧と同様に遺言書の内容を確認することができます。
従前は,遺言書の原本を使用して行っていた手続について,その代わりに添付して使用することを想定しています
(5)相続人のうちの一人が,遺言書保管所において遺言書の閲覧をしたり,遺言書情報証明書の交付を受けた場合,その他の相続人全員に対して,遺言書保管所に関係する遺言書が保管されている旨の通知があります。
(6) 遺言者があらかじめ死亡時通知を希望している場合,その通知対象者(遺言者1名につき、一名のみ)に対して,遺言書保管所において,法務局の戸籍担当部局との連携により遺言者の死亡の事実が確認できた時に,相続人等の閲覧等を待たずに,遺言書保管所に関係する遺言書が保管されている旨の通知があります。
(7) 遺言書の保管の申請や遺言書の閲覧申請などは法務局に手数料を支払う必要があります。

3.施行日

 施行日は令和2年7月10日です。