特別寄与料の支払いがあった場合の相続税の課税関係

 特別寄与料の額が確定し、特別寄与者が相続人から受領した場合は、その取得した特別寄与料の額を被相続人から遺贈により取得したものとみなされ、相続税の課税対象となります。
 一方、相続人が特別寄与者に支払うべき特別寄与料の額は、その相続人に係る相続税の課税価格から債務控除することとされています。

1.特別寄与料とは

 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者、相続人の欠格事由に該当するもの及び廃除された者を除く。以下特別寄与者という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下特別寄与料という。)の支払を請求することができるようになりました(民法1050条)。
特別寄与料の請求は複数の相続人がある場合には、そのうちの1人でも数人でもよく、必ずしも全員に対して請求することを要件とされていません。
 この特別寄与料の請求が当事者間で調わないとき、または協議することができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができます。
ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月を経過したとき、または相続開始の時から1年を経過したときは、請求できません。
 なお、特別寄与料を支払うこととなった共同相続人の負担割合は、法定相続分または指定相続分の割合に従うこととされています。
 特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額が限度額になります。

2.特別寄与者への課税

 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務を提供したことにより、被相続人の財産または増加について特別の寄与をした被相続人の親族である特別寄与者が特別寄与料を相続人から受領した場合には、その取得した特別寄与料の額を被相続人から遺贈により取得したものとみなされ、相続税の課税対象となります(相続税法第4条第2項)。
特別寄与者が、現実に葬式費用を負担した場合には、これらの費用の全額を控除することができ(相続税法基本通達4-3)、相続の開始前3年以内に、被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合には、その贈与を受けた財産の価額を加算することになります(相続税法第19条、相続税法第基本通達4-4)。
 この場合、特別寄与者は被相続人の配偶者及び1親等の親族に該当しないことから相続税額の2割加算の適用を受けます(相続税法第18条)。
 特別寄与者は、その事由が生じたことにより、新たに相続税の申告義務が生じた場合には相続税の申告書を、既に確定した相続税額に不足が生じた場合には修正申告書を、その事由が生じたことを知った日から10か月以内に相続税の申告書を提出しなければなりません。

3.特別寄与料を支払った相続人への課税

 相続人が支払うべき特別寄与料の額は、その相続人に係る相続税の課税価格から債務控除します(相続税法第13条第4項)。
 そして、相続人が特別寄与料を支払ったことにより相続税額が過大となるときは、更正の請求の特則により相続税の還付を受けることができます。

4.修正申告および更正の請求等についてのまとめ

(1)新たに相続税の申告書を提出すべき要件に該当することとなった者は、相続税の申告書を、相続税の申告書または期限後申告書を提出した者で既に確定した相続税額に不足が生じた時は修正申告書を、その事由が生じたことを知った日から10か月以内に相続税の申告書を提出しなければなりません(相続税法第29条第1項、第31条第2項)。
(2)相続税の申告書を提出した者または相続税の更正、決定を受けた者は、その相続税の申告または更正、決定に係る課税価額および相続税額が課題となったときは、その事由が生じたことを知った日から4か月以内に限り、納税地の税務署長に対し、更正の請求をすることができる(相続税法第32条第1項7号)。
(3)特別寄与料の相続税の規定は、民法改正と同様、令和元年7月1日以降に開始する相続について適用されます。