相続財産評価土地調査のすすめ

 

 相続税財産評価で案外できていないのが土地の調査です。
一般的には、土地の謄本や公図などを取り寄せと現地調査で完了とされている場合が多いかと思いますが、そこには大きな落とし穴が隠れているかもわかりません。
 相続税の財産評価基本通達には減価の規定がありますが、現地調査などの表面的な調査だけでは減価要因を見落とし、高い評価額での相続税の申告となる恐れも否定できません。
今回は、こうしたことを避けるため、先日行った松山市役所での不動産調査実例をご紹介します。

1.調査に先立っての主な法令の確認

 松山市役所に出向く前に、対象地が松山市内の宅地であることなどから次の法律を確認しました。
(1)建築基準法
 無道路地やセットバックを要する土地、私道の確認のため。
(2)都市計画法
 都市計画道路予定地や容積率の異なる2以上の地域にわたっていないかなどの確認のため
(3)文化財保護法
 評価減の可能性かある埋蔵文化財包蔵地や文化財建造物の敷地の確認のため
(4)土地汚染対策法
 評価減の対象の可能性かある土壌汚染区域の確認のため
(5)河川法
 河川地区、河川保全地地区の確認のため
(7)宅地造成等規制法
 がけ地補正、高低差による減価の可能性がある宅地造成工事規制地区の確認のため
(8)土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(土砂災害防止法)や急傾・斜地の崩壊による災 害の防止に関する法律(急傾斜地法)
 評価減の可能性の確認のため

2.いざ、松山市役所へ

 市町村役場によって担当課の名称や担当部門が異なりますので、注意が必要です。
(1) 建築基準法上の道路調査等                 建築指導課 9F
 ①建築基準法上の道路かどうか
 ②どこからどこまでが建築基準法の道路か
 ③この正面道路以外の建築基準法上の道路の有無 
 ④建築基準法上のセットバックの取扱い(幅員が4m未満の場合など)
 ⑤建築の際のセットバックの距離
 ⑥セットバックの方法(中心振分または一方後退のどちら)
 ⑦道路の中心線の位置と査定済みの有無
 ⑧複数の建物が建っており評価単位を分けたいときは「建築計画概要図」取得
 ⑨無道路地の確認(建築基準法上、建物が建てられるか否か)
 ⑩その他、建築指導課で確認できる項目
   A.最高高さ限度の有無
   B建築協定の有無
 など

(2)道路が市道か私道かの調査                 都市生活サービス課  7F
①この道路は市道か私道か
②「道路台帳平面図」取得
③ 幅員
④管理幅員
⑤現況管理かどうか
⑥市道の管理範囲
⑦境界査定の有無
 など

(3)市街化区域、市街化調整区域、非線引き都市計画区域、容積率等の調査 都市生活サービス課  7F
① 都市計画区域内か外のいずれに該当するのか
② 市街化区域、市街化調整区域、非線引き都市計画区域のいずれに該当するのか
(今回は市街化区域のため市街化調整区域の場合の調査省略)
 ③用途地域は何に該当するのか
 ④建ぺい率、容積率(容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地への該当の有無)
 ⑤大規模集客施設制限地区など特別用途地域の該当有無
 ⑥高度地区の有無
⑦防火地域等の制限
 ⑧その他都、市生活サービス課で確認できる項目
   立地適正化計画に関する事項(A都市機能誘導区域内か否かB居住誘導区域内か否か)

 上記①~⑤、⑧は「都市計画証明書」の取得で確認可能
   
(4)都市計画道路や都市計画公園など都市計画施設等の有無の確認        都市生活サービス課  7F
① 都市計画施設等の計画の有無
② 地区計画の有無
 など

  (注)上記①は「都市計画証明書」の取得で確認可能

(5)土地区画整理事業計画の有無           都市デザイン課  6F

(6)埋蔵文化財の調査                教育委員会  三番町別館
 周知の埋蔵文化財包蔵地の該当の有無

(7)その他
 ①土砂災害警戒区域、土砂災害特別警戒区域、急傾斜地崩壊危険区域の該当の有無
       防災危機管理課5F
②水路、農道の所有や管理   管財課 4F
③土地汚染対策法     松山市環境指導課4Fまたはホームページ

3最後に

 いかがでしょうか。
調査する項目は多岐にわたり、また物件によっても異なってきます。
 こうした事項を、自分で時間をかけて調査されるよりも、専門家に相談した方が早くて確実です。
疑問点がありましたら、お気軽に当事務所にお問い合わせください。