インボイス制度(適格請求書保存方式)」の導入による経理業務への影響や注意点は何でしょうか?

 「インボイス制度(適格請求書保存方式)」が導入されると、「適格請求書(以下、インボイス)」に記載しなければならない項目が増え、請求書等の様式やシステムの変更が必要です。
 仕入れデータを会計ソフトに入力する場合、インボイスを確認し、免税業者からの仕入に注意が必要です。

1.請求書等の様式の変更


 現在の「区分記載請求書」の記載事項(下記①)に加え、登録番号や適用税率等(下記②)を記載する必要があります。
(1)「区分記載請求書」の記載事項
①請求書等作成者の名称
②取引年月日
③取引の内容
④取引金額
⑤相手方の名称
⑥軽減税率適用の対象品目である旨
⑦税率ごとの取引金額 (2)「インボイス制度(適格請求書保存方式)」で新たに要求される記載事項
⑧登録番号
⑨適用税率
⑩税率ごとに区分した消費税額等
 このため、インボイスとなる請求書や領収書等の様式を変更する.必要があります。

2.経理業務に関する注意点


(1) 会計ソフトへの仕入れ入力
 会計ソフトへの仕入れ入力の際、「10%」、「軽減税率8%」等の税率別入力のほか、「適格請求書発行事業者でない事業者からの仕入」を区分して入力処理を行う必要があります。

(2) インボイスがない場合
 自動販売機や公共交通機関等利用のようにインボイスがなくても帳簿保存のみで仕入税額控除※が認められるケースは限定されており、通常はインボイスを受け取る必要があります。
 なお、課税仕入れの支払額の合計額が3万円未満である場合に帳簿保存のみで仕入税額控除※が認められる現行制度は、令和5年10月1日以降廃止となります。

※仕入税額控除とは
 消費税は、商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して課されます。例えば、小売業者は商品を消費者に販売時に、消費税を含めた代金を受け取り、卸売業者等からの仕入れ及び経費の支払時に消費税を含めた代金を支払います。
 この販売時に「受け取った消費税(課税売上に対する消費税)」から仕入れ及び経費支払時に「支払った消費税(課税仕入れに対する消費税)」を差し引いて消費税を納める仕組みを「仕入税額控除」といいます。

(3) インボイスの内容に誤りがある場合
 現行の「区分記載請求書保存方式」では、「軽減税率対象品目である旨」や「税率区分ごとの合計額」の記載漏れがある場合、仕入側がその事実に基づき追記を行うことが認められていました。
 しかし「インボイス制度(適格請求書保存方式)」では、このような追記は認められていません。
 インボイスの内容がまちがっている場合は、取引先に修正したインボイスの交付を求める必要があります。

(4) 取引先が適格請求書発行事業者であるかの確認
 適格請求書発行事業者の名称及び登録番号は、国税庁のウェブサイトで公表されます。
法人番号のように、誰でも閲覧することが出来ますので、手間がかかりますが、取引先が適格請求書発行事業者かを確認しましょう

(5) 売上税額、仕入税額の計算方法
 「インボイス制度(適格請求書保存方式)」導入後も売上税額の計算は割戻し計算が原則となりますが、自社が交付したインボイスに記載された税額を積み上げて計算することも認められます。
 仕入税額の計算は、受け取ったインボイスに記載された消費税額を積み上げて計算する「請求書等積上げ計算」が原則になります。帳簿積上げ計算、割戻し計算も差使用できますが、一部併用できないケースもありますので注意が必要です。

3.お客様等への対応


 インボイスの発行について、取引先から問い合わせを受けることが想定されますので、インボイス制度を理解し、問い合わせがあった場合の対応方法を確認しておくことが必要です。
 経理部門だけでなく営業担当・営業事務等にも「インボイス制度(適格請求書保存方式)」を周知し、対応方法を共有しておきましょう。

4.経費精算での留意点


 令和5年10月1日の「インボイス制度(適格請求書保存方式)」導入後は、下記のような場合に利用先が免税業者等のためインボイスが発行されなければ仕入制額控除※ができないため注意が必要です。
・個人タクシーの利用
・個人商店からの仕入れ
・個人が営業する店舗での飲食
・店舗・駐車場の賃借
・フリーランスへの外注
など

※仕入税額控除とは
 消費税は、商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して課されます。例えば、小売業者は商品を消費者に販売時に、消費税を含めた代金を受け取り、卸売業者等からの仕入れ及び経費の支払時に消費税を含めた代金を支払います。
 この販売時に「受け取った消費税(課税売上に対する消費税)」から仕入れ及び経費支払時に「支払った消費税(課税仕入れに対する消費税)」を差し引いて消費税を納める仕組みを「仕入税額控除」といいます。