「簡易課税制度」とは?

 消費税の課税方式には「本則課税方式」と「簡易課税方式」の2つがあります。
 簡易課税制度は、中小事業者の納税事務負担に配慮する観点から、事業者の選択により、売上げに係る消費税額を基礎として仕入れに係る消費税額を算出することができる制度です。

1.「本則課税方式」とは

 「本則課税方式」は消費税額を、「課税売上に対する消費税額(販売やサービス提供時に受け取った消費税)」から「課税仕入れ等に対する消費税額(仕入れ及び経費支払時に支払った消費税)」を控除して計算する方法です。
 この「受け取った消費税」から「支払った消費税」を差し引いて消費税を納める仕組みのこと「仕入税額控除」といいます。
 令和5年10月1日に開始する「インボイス制度(適格請求書保存方式)」では、原則「適格請求書(以下、インボイス)」の保存が求められます。

2.「簡易課税制度」とは

(1) 1.の「本則課税方式」に対し、中小事業者向けの簡便な方法として制度化されているものが、「簡易課税制度」です。
 「簡易課税制度」適用しようとする課税事業者は、課税期間の初日の前日までに、納税地の所轄税務署長に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。
この場合、その基準期間(個人事業者は前々年、法人は前々事業年度)における課税売上高が5,000万円以下の課税期間について、売上げに係る消費税額に、事業の種類の区分(事業区分)に応じて定められた「みなし仕入率」を乗じて算出した金額を仕入れに係る消費税額として、売上げに係る消費税額から控除することになります。
 上記のとおり「簡易課税制度」では実際の課税仕入れ等の税額を計算する必要がありませんから、「インボイス」の保存は求められません。

(2)「みなし仕入率」は、事業ごとに決まっており、第1種事業の卸売業や第2種事業の小売業など6つの事業に区分されており、それぞれの「みなし仕入率」は下記のとおりです。

第1種事業(卸売業) 90%
第2種事業(小売業、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業に限る)) 80%
第3種事業(農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業および水道業) 70%
第4種事業(第1種事業、第2種事業、第3種事業、第5種事業および第6種事業以外の事業) 60%
第5種事業(運輸通信業、金融業および保険業、サービス業(飲食店業に該当するものを除く)) 50%
第6種事業(不動産業) 40%

(3) 「簡易課税制度」のメリット
 「簡易課税制度」のメリットは次のとおりです。
①実際の課税仕入れ等の税額を計算する必要がなく事務作業が簡単になりうる。
②課税仕入れが少ない事業の場合、「簡易課税制度」の方が、少ない納税額となる可能性がある。
などです。

(4) 「簡易課税制度」のディメリット
 「簡易課税制度」のディメリットは次のとおりです。
①複数の事業を営んでいる場合、それぞれの課税売上を区分してないと一番低い「みなし仕入率」とされる。
②複数の事業を営んでいる場合、事業の数が多いとかえって事務負担が重くなる可能性がある。
③「簡易課税制度」は原則として2年間継続適用が強制される。
また、開始や取りやめに届け出が必要で、その提出期限がそれぞれ定められている。
などです。