「インボイス制度(適格請求書保存方式)」の導入により経営に及ぼす影響

 「インボイス制度(適格請求書保存方式)」が導入されると、「適格請求書発行事業者」以外からの仕入れは、「仕入税額控除」※が出来なくなるため、仕入先業者の選別等が行われる恐れがあります。免税業者のままでは適格請求書発行事業者に登録できないため、課税業者選択の検討が必要となります。

※「仕入税額控除」とは
 消費税は、商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して課されます。例えば、小売業者は商品を消費者に販売時に、消費税を含めた代金を受け取り、卸売業者等からの仕入れ及び経費の支払時に消費税を含めた代金を支払います。
 この販売時に「受け取った消費税(課税売上に対する消費税)」から仕入れ及び経費支払時に「支払った消費税(課税仕入れに対する消費税)」を差し引いて消費税を納める仕組みを「仕入税額控除」といいます。

1.課税事業者(本則課税、簡易課税)の場合


①売手側の影響
 既に課税事業者であっても、「適格請求書(以下、インボイス)」を発行するためには「適格請求書発行事業者」に登録する必要があります。
登録を行わなければ、インボイスを発行することができず、自社から商品やサービスを購入する事業者が「仕入税額控除」を受けることが出来ないこととなり(ただし、令和11年9月30日までは、仕入税額相当額の一部を「仕入税額控除」できる経過措置があります。)、取引そのものに影響を及ぼす恐れがあります。
 また、「適格請求書発行事業者」の登録をしない場合でも、これまで通り消費税の申告・納税が必要です。
②買手側のへの影響
 「インボイス制度(適格請求書保存方式)」導入後は、「適格請求書発行事業者」からの仕入れまたは購入等でないと「仕入税額控除」を受けることが出来ないこととなります(ただし、令和11年9月30日までは、仕入税額相当額の一部を「仕入税額控除」できる経過措置があります。)。
 つまり、免税事業者や「適格請求書発行事業者」として登録していない課税事業者などの取引先からの仕入れや購入等では、自社負担の消費税額が増加することとなります。
特に小規模な事業者からの仕入れや購入等に関して、適格請求書発行事業者登録の意向や登録状況を確認していく必要があるでしょう。

2.免税事業者の場合


 免税事業者とは、原則として①基準期間(前々事業年、前年事業年度)の課税売上高が1,000万円以下、または設立後2年以内(資本金1,000万円以上など一定の場合を除く)の法人で、消費税を納税する必要がない事業者のことです。
「インボイス制度(適格請求書保存方式)」の導入前は、買手側は、免税事業者からの仕入れであっても「仕入税額控除」を受けることができますが、導入後は「仕入税額控除」を受けることが出来なくなるため(ただし、令和11年9月30日までは、仕入税額相当額の一部を「仕入税額控除」できる経過措置があります。)、免税事業者からの仕入れや購入等を控える動きなどが起こる恐れがあります。免税事業者のままで「適格請求書発行事業者」となることはできないため、課税事業者を選択してでも登録申請を行うかどうかの検討が
必要となってきます。
 免税事業者が「適格請求書発行事業者」に登録するには、「消費税課税事業者選択届」を提出して「適格請求書発行事業者」の登録をする必要があります(ただし、登録日が 令和5年 10 月1日から令和 11 年9月 30 日までの日の属する課税期間中である場合は、課税 選択届出書を提出しなくても、登録を受けることができます。)。