法人成りにおける「インボイス制度(適格請求書保存方式)」登録の注意点

 

 法人成りを検討する際に、「適格請求書発行事業者」に登録するタイミングも検討が必要です。登録時期によって、2年間の免税期間が途中で終わることも考えられます。

1.法人成りをすることで最大2年間の免税

 消費税においては、基準期間【納税義務の判定の基準となる期間で、 消費税の確定申告の対象となる期間(課税期間)の2年前の期間、個人事業主であれば前々年、法人であれば前々年度】の課税売上高が1,000万円以下である場合は、納税義務が免除されます。したがって、新たに開業した個人事業主や新規に設立された法人などのように基準期間の課税売上高がない場合や、基準期間がない場合は、相続・合併等の特殊な例外を除き、原則として納税義務が免除されます。
 個人事業主が法人成りによって新規に法人を設立した場合は、個人事業主時代の課税売上高は、その法人の基準期間における課税売上高に含まれませんので、原則として最大2年間は免税となります。

2.法人成りのタイミング

 令和5年10月1日以降は、「適格請求書発行事業者」しか「適格請求書(以下、インボイス)」を発行できません。
卸売業などのような対事業者向けの販売等では、相手方事業者が「仕入税額控除」※の適用のため、「適格請求書(以下、インボイス)」の発行を求めてくる可能性が高く、その場合には課税事業者を選択せざるを得ないこととなります。
 こうしたことから、免税期間を最大限享受するためには、理論的には、1日でも早く法人成りをしておく必要があります。

※「仕入税額控除」とは
 消費税は、商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して課されます。例えば、小売業者は商品を消費者に販売時に、消費税を含めた代金を受け取り、卸売業者等からの仕入れ及び経費の支払時に消費税を含めた代金を支払います。
 この販売時に「受け取った消費税(課税売上に対する消費税)」から仕入れ及び経費 支払時に「支払った消費税(課税仕入れに対する消費税)」を差し引いて消費税を納める仕組みを「仕入税額控除」といいます。

3.法人成りの注意点  

 消費税の免税手続きや免税対象事業者の判定については、届出書の提出タイミングや簡易課税制度の届出等が非常に複雑です。また、その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間※における課税売上高(給与等支払額で判断することも可能。)が1,000万円を超えた場合、その課税期間から課税事業者となります。事業規模によっては原則の2年間の免税を受けられないケースもあり、事業年度の設定で有利不利が発生することもあります。

※特定期間とは、個人事業主の場合は、その年の前年1月1日から6月30日までの期間、法人の場合は、原則として、その事業年度の全事業年度の開始の日以降6か月の期間をいいます。